初めて聞く、朔夜くんのこんな小さな声音を。

「なぁ、覚えてるか…? 俺たちが、初めて会った日のことを。俺が6さいで、月子は7さいだった。弦はまだ5さいで…満と望が生まれる少し前。俺は…両親を火事で亡くして…この家に、ひきとられることになった」

どく、と。心臓が鳴る。

それはぼくが、ぼくなんかが。
聞いていい話じゃ、立ち入っていいものなんかじゃ、なかった。
途端に後悔に襲われる。
だけど朔夜くんは続ける。

「俺の父さんと月子の父さんは、高校時代の部活仲間で…親友だって、言ってた。1度だけ、この家に遊びにきたこともあった。月子は覚えてるかわからないけど…一緒に星を、見たんだ。6さいの時…いろんなことがいっぺんにあって、家も家族もなくなった。
だけど再会したあの日に、月子が、ずっと一緒に居ようって、言ってくれた。“家族”だから、って。月子のことを“姉”だとは思えないのは…俺がガキで、上手く消化できなくて…だから“お姉ちゃん”だなんて呼べなくなっていった。死んだ両親のことの記憶があるから余計に、急になった家族っていうものを上手く受け入れられなくて…だけど、この先一生ひとりで生きていかなきゃいけないんだと思ってた俺に、月子は一緒に生きていこうって、言ってくれた。俺は…その言葉に、救われたんだ。たくさん感謝してるし、大事に、思ってる。月子が居てくれて、良かったと思ってる。きっと、これから先もずっと。俺は月子のこと、大切に思うよ」