「ずっと…嫌われてると、思ってきた、の…そしたら上手く、笑えなくて、話せなくて…ずっと…ひとりぼっち、みたいだった…」
月子ちゃんはぼくみたいに、簡単に逃げ出したり吐き出したりしなかった。
きっと月子ちゃんにとってはこれが初めての、“逃げ”なんだ。
こんな風に、なるまでの――臨界点。
「俺、は…」
朔夜くんの視線がゆっくりと下がる。
ぎゅ、とその拳を強く握ったのが視界の端に映る。
「俺は、…月子のこと、“姉”なんて思ったこと、ねぇよ…初めて会った時から、ずっと。だけどそれは、月子が“姉失格”だとか、そういうわけじゃない…ずっとひとりだと、思ってたのは……俺のほうだ」