「あの、もうすぐ、迎えにきてもらう…ことになってる…」
月子ちゃんらしくない、歯切れ内の悪い口調。
未だにぼくは、ちゃんと月子ちゃんのふりを上手くできない。
朔夜くんがじっと、その目でぼくを見つめる。
「…ならいいけど……なんか最近お前、おかしくねぇ?」
「え…っ な、なに、が…?!」
ダメだ、またどもる。
特に朔夜くんを相手だと、どうしてだか全く誤魔化せる気がしない。
たぶん朔夜くんが、見るから。
まっすぐぼくを見るから。
ああ、そうか。…ちがう。
朔夜くんが見てるのは、月子ちゃんだ。
「ひとりでも平気っつってたお前があんなヤツと一緒に居るなんて、おかしいだろ、接点もなさそうだし。何かあったら、俺に言えって、言っただろ」
「……う、ん…」
壁に背を預けながら、朔夜くんがガシガシと頭をかく。
ほとんど年の変わらない、少年の顔だ。
ぼくと同じ、男の子だと思った。