本を読むとすぐ夢中になって、周りが見えなくなって、お母さんに怒られて。
ゆづるが泣いてるのにも気づかないで読みふけっちゃうの。
だからわたしが、ゆづるのおむつ、替えてあげたんだ。

『わたし、お姉さんだから。はやく大人になって、お仕事して、みんなで大きな家に住むの。弟が増えるから、おっきな家がいいな、そしたら犬と猫も飼うんだ』
『そう…お姉ちゃんなんだ。ぼくもね、弟が居るよ、ふたり』

『でも、でもね…』

あれ、おかしいな。
さっきよりも視線が、少し高くなった気がする。
日向さんの目線の高さも。
その瞳に映るのは、さっきより少し大きくなったわたし。

『さくやと、上手く話せないの。突然姉弟に、なったから…上手く“お姉ちゃん”に、なれないの…』

そう、わたしが、7さいの時。
朔夜はうちにやってきた。

『お父さんはね、はじめ、男の子が欲しかったんだって。いっしょにキャッチボール、したかったんだって。今はゆづるがいるのに…ゆづるはおままごととか絵本の方が好きだから。わたしはキャッチボール、できないから…だからわたしは、要らない子なのかもしれない…さくやの方が、いいのかもしれない…ちゃんとお姉ちゃんを上手くできないと、わたしがどっかに連れてかれちゃうかもしれない……!』