◇ ◆ ◇
日向さんは少し背を屈めて、あたしの顔を覗き込みながら、微笑んだ。
『どうしたの? 迷子?』
まるで小さい子を見るような、柔らかい声音でそう話しかける。
あたしに向かって。
『……え、っと…』
『お名前、聞いてもいい?』
そんな言い方されなくても。
あたしはもう17歳。高校生だ。
なんだか失礼なひとだな。
そう思いながら、なんとなく気まずい気持ちで口を開く。
『……やまだ…つきこ』
言って見上げた彼の瞳に映る自分は、およそ高校生とはかけ離れた外見。
そう、ちょうど今の瑠名くらいの年頃の女の子が、日向さんの瞳に映っていた。
日向さんはあたしの答えによくできましたとまたわらう。
『ぼくはね、鈴木日向。よろしくね、月子ちゃん』