◆ ◇ ◆


「…もう…いいよ…!」

繋いだ手が、もう片方の握った拳が、震える。

そんなこと、言わなくていい。
これ以上もう、なにも言わなくていい。

だけどそれはきっと、もう月子ちゃんの心には抑え切れなかったのかもしれない。
抱え切れなかったのかもしれない。

ぼくが何度もこの右手に、吐き出してきたように。

「自分を責める気持ちは、わかるよ…だってぼくも、そうだもん…ぼくが居なければって、ぼくが居なくなればって…! だけど、ぼくは月子ちゃんに出会って…ぼくにもできること、知ったよ…できないことの方が多いけど…ッ できることもあるんだって、気付いたんだ…!」

繋いでいた手を力強く握る。
ぼたぼたと涙がふとんに垂れて染み込んだ。
月子ちゃんは何も、返さない。

「ぼくは…ぼくはもう、逃げたくない…見ないフリも誰かのフリも、あの部屋にひきこもるのも…! もう…やめたい…!」

ぎゅう、と目を瞑る。
涙はいつの間にか止まっていた。

なぜだろう、頭が熱い。
興奮しているせいだろうか。
頭だけじゃない、体もやけに。

「やり直したい…新しい人生じゃなくて、“ぼく”の人生を、もう一度…!」