『月子…! ……ッ、…!』

叫んだお母さんが、お腹をかかえてその場に蹲った。
お父さんが蒼い顔のお母さんを抱えながら何度も呼ぶ。
お母さんの足元には血が流れ出していた。

『…お、おかあ、さ…』

その光景に、まるで顔面を殴られたみたいな衝撃を受けて、あたしはまともに立っていられず座り込む。

あたし達の叫ぶ声に、すぐに朔夜たちが駆けつけて、救急車を呼んでくれた。
お父さんがお母さんを抱いて救急車に乗り込む。

サイレンが、遠ざかる。
だけど耳の奥でずっと、警告音は鳴っていた。

夢ならいいのにと思った。
そう、ぜんぶ、なかったことにできたなら。

きっとあたしの声が、お腹の中の赤ちゃんにも聞こえていたんだ。
あたしなんかの妹に生まれてきたくなかったんだ。

だって一番言っちゃいけないことを、あたしが言ったんだから。