だけど図書館に参考書は置いてなくて。
うちにはパソコンなんてものもない。
それに勉強以外のやることが、たくさんあった。
時間が足りない。勉強をする、環境も。
少しずつ少しずつ。募っていく得体の知れない醜い感情に気付かないふりをして、必死に押し隠した。
家事の手伝いを、弟達の世話を、参考書すら買えない現状を。
勉強する時間より弟をあやしている時間の方が長いこの実情を。
次第にわずらわしく思う、自分がいる。
込み上げるやるせなさに、拳を握る自分がいる。
そんな自分に一番驚いたのは自分だった。
信じられなかった。
あんなに、大切に思っていたのに。
お父さんもお母さんもあたし達を育てる為に必死に働いてくれている。
もう十分、理解しているつもりだった。
あたしは、この家の長女なんだから。お姉ちゃんなんだから。
そう必死に言い聞かせて、自分も周りも誤魔化して。
でもそうやって取り繕ったって、いつしか何かがいっぱいになって。
醜いあたしの本性はあの日にとうとう露呈した。