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自分の家が貧乏だってこと、小学生の頃にまわりにの同級生からはやしたてられるまで、あまり意識したことはなかった。
確か給食費の滞納を、男子にからかわれたんだ。
でも仕方ないと、うちは大家族だからと、子どもながらに理解してるつもりだった。長女だったっていうのもあったのかもしれない。
だけどあまり物欲のない子供だったせいか、服が欲しいとかオモチャが欲しいとか、ほとんど思わなかった。
いつも真新しい綺麗な服を着て、流行のオモチャを持って誇らしげな顔をしている周りの子たちとは、根本的に馴染めなくなって…いつしかひとり、孤立していった。
でもそんなのなんともなかった。哀しくも、悔しくもなかった。
だって家に帰れば家族が居た。それだけで良かったから。
お父さんの影響で、本は好きだった。
家にも本はたくさんあったけど、どれもボロボロだった。
だけど図書館にいけば本はいくらでもあったし、借りてくれば家でも読めた。
読むのはいつも、お父さんおススメの本。
お父さんはいつも夏目漱石や宮沢賢治をすすめてくる。
確かに本は、おもしろかった。
だけどひとりでも図書館に行くようになってからは、医学書ばかり、読み始めた。
“医者”という職業を意識し出したとき…もっと勉強しなきゃと思った。