「だから生まれてくる子が、男の子でも女の子でも、名前に“月”を入れることにしたの。あの夜の愛が、消えないように…どんなに暗い夜でも、照らしてくれるように。子供たちはみんな、そう願いを込めて名前をつけた。月子には、できるだけたくさん、兄弟をつくってあげたかった。月子のあとには3人続けて男の子、それから瑠名も生まれた。夢にまでみた、賑やかな家族で、幸せだった。お金はなかったけれど、みんな、いい子だったから」
その表情は、月明かりと夜との境界に溶けて、みえない。
今日の月は、ちゃんと明るいだろうか。
ちゃんと夜を、照らしてくれているだろうか。
「瑠名が生まれる前に、あの人はもう、余命を宣告されていたの…お父さん、言ってたわ。自分の命の限りが見えたとき…やっぱり一番さいしょに浮かんだのは、子供たちのこと。死にゆく自分はどうしたら、子供たちを幸せにできるだろうって、そればかり考えてた、って。そのすぐ後に月子から、将来のことを相談された時…医者になりたいって、言われた時。“待ってるからがんばれ”なんて言えなかったのは、自分の余命を、未来を、知っていたから…月子の未来を、自分が縛りつけたくなかった。奪いたく、なかったから…だけど想いは上手く噛み合わなくて。月子を…深く傷つけてしまった」
