そっと、少しだけ開いていた部屋の扉から顔を覗かせたのは、月子ちゃんのお母さんだった。
あまりにも上手に気配を消していたものだから、声をかけられるまでぼくは気付かなかった。
「…あら、目、覚めたのね。痛み止め、どう?」
「あ…っ、すいません、いつの間にぼく、寝ちゃって…痛みは今はもう、ぜんぜん平気です…」
手には水とタオルを持っている。
音を立てずに室内に入り、テーブルにそれらを静かに置いた。
それからベッドの月子ちゃんを覗き込む。
ぼくは慌ててベッド際からどこうとしたけれど、やんわりと手で制された。
一瞬躊躇したけれど、素直にそのままじっとしていた。
「月子も少しは、顔色が良くなったみたい…汗もかいてるし、ちゃんと薬が効いているみたいで良かった。この子昔から、薬とか注射が苦手で。本当、子供なんだから」
そう言った顔は当たり前だけど“お母さん”で、そして月子ちゃんはやっぱり、“子供”なんだ。
鼻の奥が意味もわからずツンとした。
だけど月子ちゃんのお母さんの前だったので、必死に堪えた。
「あ、そうだ、プリン作ったんだけど…鈴木くん、食べない?」
「えっ、あ、あの、すいませんぼく、卵アレルギーで…!」
「あら、そうなの…」
「す、すいません…」
「ばかね、謝ることないでしょう。そうでも、大変ねごはんとか」
何気なしに言われてぼくは、はっと気付く。
ぼく、今までのごはんって、どうしてたっけ…?
