砂埃が舞い、うっすら煙が巻いている。
その向こうから、ゆるりと大きな人影が保健室に侵入してきた。
おそらく今しがたドアを蹴倒した本人だろう。
誰が、どうして、こんなこと。
だけど半ばどうでもよかった。
なんだかもう、ぜんぶ。投げ出したい気分だった。
もう一度瞼を閉じようとしたその瞬間、随分と聞き慣れた声が耳に届いた。
「――月子ちゃん…!」
…ああ、これは。
自分の、声だ。
だけど他人の耳で聞くとやっぱり違和感。
あたしの声は、こんな抑揚がはげしくないから。
あたしはこんな風に叫んだり、しないから。
その声は保健室へ侵入してきたナゾの人影の方から聞こえてきたと思ったら、その後ろからさらに人影が飛び出す。
保健室内を見回していた視線が、あたしとぶつかった。
そこに居たのは“あたし”で、そして“彼”だった。
…どうして。
どうして戻ってきたのよ。
こんな、ところに。
