もう一度振り上げられた拳に瞼を閉じた瞬間、突如けたたましい音が保健室いっぱいに響き渡った。

保健室だけじゃない、廊下にも、近隣の教室にも。
その大きな音が辺り一帯に衝撃を撒き散らしながら地面を揺らした。
まるで雷か地震みたいに。

それが破壊音だと気付いたのは、勢いよく倒された保健室のドアが視界の端に映ったからだった。
そのドアは中央部あたりがベコリとへこんで、金属片がそこら中に飛び散っている。

薄く上がる砂埃。
耳の奥では耳鳴りがしていた。

「な、なんだぁ…?!」
「げほ、あぶね…! 下敷きになるとこ、だった…!!」

あまりの出来事に振り下ろそうとしていた桜塚の手も止まる。
あたしは頭すら動かせず、眼球だけ動かしてその変わり果てた保健室のドアを見つめていた。

無残な姿に成り果てたそのドアは、さっきまであたしが必死に守っていたものなんだけれど。
世の中って、理不尽だな、なんて。
どこか他人事のように考えていた。

て、いうか。
いま一体なにが起こったのだろう。