ベッドのカーテンはひかれたまま。
薄いカーテンの向こうから、ドカドカと乱暴な足音が室内に響く。
足音の数から察するに、桜塚といつもつるんでいる2人も一緒だ。

いよいよ絶望的な状況。
流石の涙もひっこんだ。

突然、ベッドに残っていた白いシーツが、ぼくの視界を覆った。
その瞬後、月子ちゃんがぐい、と力強くぼくを抱きかかえる。
いきなりの浮遊感に慌てて目の前の体にしがみついた。

一体、何を。

突然のことに声すら出ない。
思考が追いつかない。
頭まで真っ白になる。
響く、声。

「…恭子たち、居ねーじゃん」
「トイレだろどーせ」

ひやりとした冷たい恐怖が頬を撫ぜる。
心臓が止まり、すぐに今度は暴れだす。
血管が千切れそうなくらい、ひどく。

カーテンのすぐ向こうから聞こえてくるのは、紛れもなく桜塚達の声だ。
その声だけでぼくを支配できる、恐ろしい声音。
震えることすら忘れるほどの。

この前の呼び出しにも応じなかったし、その後のメールや電話にも一切反応を返していなかったので、こんな至近距離で声を聞くのは久しぶりだった。