すぐ目の前で月子ちゃんが、困ったような、呆れたような顔をしているのがわかる。
“ぼく”の目から溢れていた涙はもう止まっていた。
おかしいな、そんなカンタンに止まるはず、ないんだけど。
「とりあえず、ここから出ましょ…ここに居てもやり過ごせそうにはないし」
「う、うん…」
ぼくの体になって絶不調から解放されたからか、月子ちゃんの声の様子はいつもの月子ちゃんだった。
逆にぼくはしんどくて辛い。
昨日の苦しみの再来に頭を抱えるしかできない。
自業自得なんだけど。
月子ちゃんが先にベッドの下から這い出て、それからぼくの手をとってひっぱり出してくれた。
動揺と不調とで上手く立てない。
体の感覚がひどく鈍い。
よろけた体を月子ちゃんが支えてくれた瞬間、あっという間に視界が溢れった。
止め処ない涙はこんなにカンタンに、ぼくから月子ちゃんの体へと乗り移るのに。
ぐしぐしと涙を拭いながら、月子ちゃんに向き直る。
改めてこうして立つと、身長差から見上げる形になる。
月子ちゃんはやっぱり表情を変えずに、ぼくを見下ろしている。
その目はぼくを、責めているわけではなかった。
たぶん、なんとなくだけれど、そう感じた。