こわいと、思ったのは。

彼女から桜塚の名前が出てきたこともそうだし、桜塚達がこちらに向かっているのもそうだし、その後のことを想像するともう正気を保っていられないってくらいこわかった。

だけど何よりこわかったのは。

堀越恭子の口からそんなバカみたいな言葉が当たり前のように零れたこと。
月子ちゃんはやっぱり、当たり前のように平然としてその言葉を聞き入れていること。

当たり前の意味を、この場で理解できていないのは、ぼくひとりで。

こんな世界で月子ちゃんがただボロボロになっていく様子が、ぼくには鮮明に想像できた。

それがこわくて哀しくて、……悔しかった。