「前に、月子ちゃんはぼくに言った…自分を卑下することしかできない、そんな言葉しか出てこない、ぼくに向かって」
「……な、に…言って…いいから、はやく…」
「“あなた自身が自分をそう思うから、動けないんでしょう”って。今の月子ちゃんも、いっしょだ」
月子ちゃんが望む罰は、一時だけでもきっと、救われた気になるんでしょう?
傷つけられることを望みながら、償っている気に、なるんでしょう。
もう居ない相手への、贖罪は。
「“それ”、は…償いにはならないよ…だってそれで救われた気になるのは自分自身だけであって、償うべき人には、何も届かないんだから…! 何も返ってはこないんだから…!! 月子ちゃんだけが、受けるべきだと思っている罰は、ひとりよがりでしかないんだから…!!」
大声を出しすぎて喉が痛い。
情けないな、カッコ悪い。
だけどやっぱり今更だ。
久しぶりだ、こんな声を出したのも、荒げたのも。
怒って、いるのだろうか。
自分でもよくわからない。
ただ、哀しい。
「月子ちゃんが、よくても…」
でももうぼくは。
自分以外の痛みを知った。
そしたらぼくの痛みなんて、くだらないことに気付いたんだ。
幼稚で世間知らずで思い上がりで。そしてやっぱり、ひとりよがりの断罪だったんだ。
きっと月子ちゃんだって。
本当は気付いているんでしょう…?
「ぼくはイヤだよ…!」