掴んでいた手に力が篭る。
ぼくのこの手の熱が、月子ちゃんの手にはいっこうに移らず、ぼくの手の内だけで虚しく彷徨っている気がする。
月子ちゃんのこの手は、救いの手すらきっととらないのだろう。

それはかつてぼくも抱いていたものだ。
あの狭くて暗くて小さな世界でただずっとそれだけを願っていた。

望んでいるのは救いなんかじゃなくて、自らの罪に相応しい罰。
赦せないのは誰より自分自身。

ずっと、ずっと。
あの日奪ったものに値するくらいの、相応しい罰が欲しかった。
どんなに重たくたって苦しくたって辛くたって、自分で望んだものだから受け入れられる。

ぼくはそれを自らの命で償う代償だと思ってた。
どんなに罰を受けたって日向兄さんは戻ってこないから、帰ってこないから。
だからせめて兄さんが生きるはずだった時間を、まるごと差し出そうと、そう思っていた。
それだけを思いながら生きてきた。
ぼくにはそれくらいしか、差し出せるものがなかったから。

でも月子ちゃんは決して死を望まない。
大切な家族が居るから。

だからきっと。
生きながらずっと。

痛みを負うことで贖い続けるつもりなんだ。