「いい、わけ、ないよ…」
「…いいから、あなたこそ逃げなさいよ、彼女達に出くわしたら、いろいろと、厄介でしょ…」

そんなの、わかってる。
堀越恭子達が桜塚達と繋がっていて、ぼくにとっては厄介中の厄介人物だってことぐらい。
ぼくだって十分、わかってる。
そんな、弱っている月子ちゃんに心配されなくたって、わかってるんだ。

だけど、月子ちゃんにとってだって、最悪の相手じゃないか。
こんなに、誰の目から見ても弱っている月子ちゃんを目の前にしたって、きっと彼女達の中には容赦とか躊躇とか同情なんて、微塵も存在しないんでしょう? 
月子ちゃんだってそんなことぐらい、もう十分わかっているんでしょう?

でも月子ちゃんは抵抗どころか、逃げも隠れもしない。
それは強さなのだと思っていた。
月子ちゃんは強いんだと思っていた。
ぼくなんかとは、ぜんぜん違うって。

だけど、ちがう。

今のぼくの目に、もう月子ちゃんは強く映ったりなんかしない。

「どうして月子ちゃんは自分から傷つこうとするの…」

もしもそれを、月子ちゃんが望んでいるのだとしたら…月子ちゃんはやっぱり、似ているんだと思った。

もうひとりのぼくだと思った。