白いシーツに吸い込まれたその言葉を、その雫を。
すくえもしない、ぼくは。

「……な、に…してるの」

すぐ傍で聞こえてきた声に、は、っと顔を上げると、うっすらと目を開いた月子ちゃんの視線とぶつかる。
ぼくは慌てて自分の涙を拭い、握っていた手を解く。

「あの、ぼく、月子ちゃんが倒れたって、聞いて…!」
「……あたしが…?」

月子ちゃんはまだ事態が呑み込めていないのか、きょろきょろと視線を彷徨わせる。
意識が朦朧としているのだろう、焦点が合ってない気がする。

「……ここ…」
「…保健室だよ、学校の」

なぜだかぼくはうしろめたい気持ちから、ぎゅ、と自分の手を握り締める。
月子ちゃんの顔を、まともに見れない。

「どうして、あなたが…」

月子ちゃんが呟いたのとほぼ同時に、保健室の扉の向こうの廊下から、声が聞こえた。複数の人の気配と供に。

「山田、本当に保健室にいんの?」
「らしいよ、ぶっ倒れたって聞いたけど」

授業中のはずなのに、声を潜める様子もなく、大声で近づいてくる。
もはやぼくも聞き違えない、それは。

「病人で遊んでもつまんなくない? …恭子」

堀越恭子たちの声。

「…別にビョーキだろうがカンケーないし。あたしが今、むしゃくしゃしてるから、アイツで憂さ晴らしするのよ」