熱があがったのだろうか。
何か、冷ますものはないのか。
保健医はどうして居ないんだろう。
どうして何も、処置してくれた様子がないのだろう。
やり場のない怒りと情けなさで視界が歪む。
「…め…な、さ…」
月子ちゃんの眉間に皺がより、額にはうっすらと汗が滲んでいる。
零す言葉は小さくて、か細過ぎて上手く聞き取れない。
「苦しいの? 月子ちゃん、だいじょうぶ…? 月子ちゃん…っ」
またすぐ、泣きべそをかく自分。それしかできない自分。
情けなくて自分に腹が立つ。
だって目の前で月子ちゃんが、こんなに辛そうで。
なのにぼくには、何もできなくて。
ぎゅ、と。反射的にその手を握る。
思ったより力強く握り返されて一層胸が苦しくなった。
月子ちゃんの口元がまた小さく動く。
「…と、うさ……ごめ、んなさ… おとうさん……」
それは、小さく、小さく。
月子ちゃんから零れて落ちた。