思わず窓に触れていた手に力が篭ったその瞬間、窓ガラスが横に小さく動き驚いて息を呑む。

「……!」

鍵が、かかっていない。よく見ると隙間が少し空いている。
おそらく部屋の中央にあるストーブ用に、換気していたのだろう。
ストーブの上に置かれたやかんからは蒸気が噴き出している。

ぼくは焦る気持ちを押さえながら、ゆっくりと窓を開け、人ひとり分の隙間を作る。
それから身を乗り出して、室内に侵入した。

外との温度差で、メガネが一瞬にして真っ白に曇った
。メガネを外し壁に背を預け様子を伺いながら、服の袖でレンズを拭いかけ直す。
それからまたゆっくりと、窓を閉める。

おそらく人は誰も居ないはず。
だけどさっきの電話みたいに油断して、こんな不法侵入みたいな場面を見られたらシャレにならない。
一応生徒なんだから不法侵入ではないのだけれど、堂々と扉から入らないあたり、気持ちそれに近いのだ。

なるべく気配を消しながら、カーテンのひかれたベッドに近づく。
どくどくと心臓が鳴る。

そろりとカーテンの隙間から中を覗くと、ベッドに横たわっている青い顔の女の子が居た。

「……月子、ちゃん…」

月子ちゃんだった。