ぼくは自分で言うのもなんだけれど、割と慎重派だ。
物事はたいてい調べて調べて調べつくしてからとりかかるし、無謀だったり無茶だと感じたものからは早々に手をひく。
それはあの部屋の中で起こる出来事限定だったけれど。
でも月子ちゃんと出会ってから、月子ちゃに、なるようになってから。
毎日が、いや、1分1秒でさえ目まぐるしい。
本当にあっという間に時が過ぎていく。
考えている暇もないほど、考えている時間も惜しいほど、こんなに必死な気持ちで何かをしたことがあっただろうか。
こんな、行き当たりばったりな、半ばやけにも思える気持ちでぼくが学校内を走っているなんて、一体だれが想像できただろう。
こわいこと、不安なこと、この道の先にはたくさんある。
だから散々避けて逃げていた。
その道をぼくは今、走っている、こんな自分。
少なくともぼくはできなかった。こんな自分、知らなかった。
きっと月子ちゃんの強さが少しだけこの体にうつったのかもしれない。じゃなきゃきっと知れなかった。こんな、自分を。
ぼくには未来なんてないと思ってた。
要らないと思ってた。
あっちゃいけないと。許されないと。
そう誰よりもぼくが思っていた。
じゃあぼくを許すのは誰だろう。
ぼくは誰に、許されたいのだろう。
なんの為に、誰の為に。
答えはやっぱりまだわからないけれど、それでも今は。
きっと何より自分自身の為に、走ってる。