とはいえ、ここがぼくの限界だった。
流石に教室には行けない。
絶対にムリ。
それだけは超えられない。
胸元で握り締めていた携帯を、ちらりと覗く。とくになんの知らせも入っていない。
「月子ちゃんメール気付いてないのかな…」
家を出る時とここに着いてからと、月子ちゃんに2通メールを送った。
きっとマナーモードにしているであろうことを信じて、電話も1度だけかけた。
月子ちゃんからの反応はないけれど。
マジメだからなぁ。授業中にメールとか、しないんだろうな。電源は切ってはないみたいだけど。
「どうしよう…そろそろお昼休み入っちゃうよ…」
情けなく零れた呟きと同時に、まさにチャイムが鳴り響いた。
校内いっぱいに。
遠くで喧騒が教室から廊下に、外に、溢れ出す。こんな遠くの場所でもそれを感じる。
ぎゅう、と携帯を強く握りしめる。
ヘンな汗が体中から吹き出ている気がした。
こわい、何がともわからず、ただ。
どうして月子ちゃんはこんな所に、毎日来るのだろう。
体調を崩してるのに、そうまでしてムリしてまで。
なんの意味が、価値が。
あるのだろうこんな所に。