だってぼくが約束を守るためには、この部屋から出なくちゃいけない。
絶賛ひきこもり中のぼくが学校に行かなくちゃいけないわけで。
意気地なしのぼくがそんなこと、到底ムリなわけで。
それはもはやひきこもりではないわけで。
だけど、なのに、どうしてか。
ぼくは結局今、ここにこうして居るわけで。
「……じゃあぼく、一体なんなんだろう…」
零れた言葉と白い息が、冷たい空気にすぐに溶けて消えた。
…だって。
月子ちゃんの風邪は、明らかにぼくがうつしたものだ。
心底申し訳ないし、ものすごく心配もしてる。
月子ちゃんともあんな別れ方をしたままで、ものすごく気まずいのだけれど、それはまた別の問題だってこともわかってる。
それに、朔夜くんには自転車の乗り方を教えてもらった借りがある。
朔夜くんに嫌われてることに変わりはないとしても、苦渋の選択だったとしても、頼ってもらえたことは単純に、嬉しかった。だから考える間もなく返事してたんだ。
なにより一番はきっと…どんなに意気地なしで弱虫で嘘吐きなぼくだったとしても、カンタンに約束を破るのだけは、イヤだった。
カンタンに月子ちゃんを見捨てたりすることだけは、できなかったんだ。
だからここに、来たんだ。