お父さんはまっすぐあたしを見つめ、口を開いた。
『…お父さんは正直、反対だよ…月子に医者なんて、なってほしくない…ものすごく、大変な職業だ。そう簡単になれるものじゃない』
『か、簡単になれなくたって、難しくたって、そんなこと…!』
『月子は頭も良いし面倒見だっていい。もっときっと、月子に合った職業がきっとある。 月子には、もっとちゃんと将来が…』
『あたしの将来をあたしが決めちゃいけないの…?! うちが…っ! 貧乏だから…?!』
『月子…!』
叫ぶあたしを、お母さんが止めた。
あたしは目の前のお父さんに、生まれて初めて大声を上げた。
お父さんもお母さんも哀しそうな顔をしていた。
あたしは子供で、言いたいことが上手く伝えられなくて。もどかしさだけが声にもならず唇を滑って。
ちがう、こんなこと言いたかったんじゃない。
あたしはただ、応援してほしくて──
中学受験の話は、半分はきっかけでしかなかった。
本当に一番言いたかったのは、伝えたかったのは、医者になりたいってそれだけで…ただ、それだけで。
──喜んで、ほしかった。
ガンバれって、言ってほしかった。
待ってる、って。
笑ってほしかっただけだった。