◇ ◆ ◇

──ああ、しくじった。あたしとしたことが。

昇降口の下駄箱に手をつきながら、短く息を吐く。
マスクごしに漏れる息が冬の空気に白く溶けた。熱が上がってる気がする。顔が熱い。

「……ケホ…」

喉が痛くて枯れた咳しかでない。
本当にまったく、あたしとしたことが。
弟達に、特にまだ幼い瑠名にうつすといけないから、健康面には十分気を配ってきたつもりだったのに。のこのこ風邪をうつされて帰ってくるなんて。

本当に、調子が狂うことばかりだ。やっぱりさっさと帰れば良かったんだ。

ごほごほと棘のある咳がマスクの中で暴れる。下駄箱から取り出した上履きが足元に勢いよく転がった。

熱いのに寒い。奥歯がカチカチと震えだす。体は違うのにどうしてこういう症状は同じなのだろう。
やっぱり絶対、割に合わない気がする。