びっくりして思わず電話口で思い切り叫んでしまった。
あまりにも予想外の相手すぎて。

そういえば月子ちゃんの持っている携帯は家族共用のだけど、朔夜くんは自分のを持っているんだ。

「あれ、でもどうしてぼくの番号知って…」
『共用の携帯に残ってた番号を、一応メモってたんです。多分あんたのだろうと
思って』

正解です。
さすが、しっかりしているというか、抜け目ないというか。
携帯越しだからか、若干の敬語にくすぐったさを覚える。それとなく棘はあるけど、敵意もわずかばかり薄れた気がするし。

「でも、ぼくに何の用…」
『……まだ、家ですか…?』

「え、う、うん…」

そうか、朔夜くんはぼくがひきこもりで学校に行ってないってこと、知らないんだ。
まだと言われたけれど、ずっと家だ。言えないけれど。

『実は月子、昨日帰ってきてすぐ倒れて、寝込んでたんです。珍しく風邪、ひいたみたいで…なのに朝になって熱下がってないくせに、学校行くって譲らなくて…あいつ、頑なだし…母さんも居ないから、俺ら兄弟が止めてもきかなくて。あいつもう、家出ちゃったんです。それで、ものすごく不本意ではあるんですけど、確かあんた、月子と同じクラスなんですよね? 今日1日、月子がムリしないよう、見ててやってくれませんか?』