◆ ◇ ◆


部屋のドアをゆっくと開け中に入る。
眠っている彼を起こさないように気をつけながら。

もう夕方を過ぎた冬の空は暗く、室内も真っ暗だった。

そろりと屈み、自分のカバンを手探りで探す。
床についた膝の痛みに思わず顔をしかめた。

「……月子ちゃん…?」

か細い声が、ベッドから聞こえた。

体を起こし視線を向けると、彼が上半身だけ起こしているシルエットがぼんやり見える。

「…まだ寝てなさいよ」
「…うん…」

寝ぼけているのか薬が効いているのか、いつも以上に反応が鈍い気がする。
面倒くさいからまともに相手しないことにして、作業を再開した。

一刻もはやくこの部屋から出て帰りたかった。