差し出されたプリンを食べる間、本当に他愛のない話をした。
その間お兄さんは一切を口を開かず、あたしもお母さんに訊かれることに戸惑いながら短く答えるだけで。
お母さんの手作りプリンは純粋に美味しかった。
プリンを食べ終えたのを見計らって、お母さんがにこりと笑った。
「ごめんなさいね、付き合わせちゃって。うちは男の子ばかりだから、女の子のお客様なんて、嬉しくて。これからもどうぞ、仲良くしてあげてね」
その場限りでも笑って返事するのが正解だったのかもしれないけれど、なんとなく嘘をつくのもイヤで。
中途半端に曖昧に、頷くことしかできない。
お母さんの顔を見ていられなくなって、思わず目線が下がる。
だってあたし達は別に、仲が良いわけでもなんでもないのだから。
「……君は本当に、陽太の友達なのか…?」
漸く口を開いたお兄さんの鋭い口調と視線に、顔をあげた。
今更だけどお兄さんは、ちゃんと彼を呼ぶ。
当たり前なんだけれど。
真剣な眼差しとぶつかる。
誤魔化すことも逸らすことも許さない目。
あたしは僅かに沈黙し、それから答えた。
「……お兄さんが思っているようなものとは、少し、違うかもしれません…だけど」