開け放されたドアのところには、にこにこしたお母さんと、心なしか険しい顔のお兄さん。
あたしは慌てて傾いていた姿勢を正し、その場に正座する。

急な状況の変化に上手くついていけない。
ばくばくと心臓が騒ぐ。

あれあたし今寝てなかった?

制服のスカートから覗く膝小僧が視界に映る。
両の膝小僧が赤黒くなっていた。
ついでに右手も少し痛かったけどそれどころじゃない。

控えめに視線を彷徨わせると、すぐ後ろのベッドには、彼が寝ていた。

いまあたしは、紛れもなくあたしだ。
元に戻ったんだ。こんなタイミングで。
よりにもよって、こんなアウェーにひとりで。

なんで、こんな時ばかり。
ちょっと割に合わない気がする。
あたしだって寝たかった。

でもやはり重症の風邪の体より、自分の体の方が楽だ。
当たり前だけれど。