ひとり用の土鍋の中は空っぽになったけど、彼のお母さんはまだ戻ってこない。
薬を水で流し込むと、あっという間に眠気に襲われた。
「…寝る…」
「うん、そうだね、なんだかぼくもねむいや…」
ベッドにもたれながら、彼が呟く。
あなたまで寝たら収拾つかないでしょう。
そう言いたかったけど、言葉に成ったかもわからない。
瞼が重たくて、開けていられなくて。
「月子ちゃんのお母さんは、月子ちゃんに、そっくりだね…」
どういう意味よ。いいからちょっと、寝ないでよね。本気で。
あ、もう、ダメだ。
意識が遮断される。ゆっくりと。
そして、次の瞬間。
「待たせてごめんなさいね、ついでに晃良も呼んだの、注射打ってもらおうと思って…」
やはり前触れもなくドアが開き、お母さんがやっと戻ってきた。
その後ろには、お兄さん…晃良さんも連れて。
そして、あたしは。
「………あ、の…」
あたしに、戻っていた。