「う、梅干、入れたほうがいいのかな…?!」
「あんまり味はしないだろうけど、気持ちすっきりするのよ、こういう時。ぜひ入れてください」
「は、はい、わかりました…あ、熱くないかな…あっ、ふーふーしてあげようか…!」
取皿を差し出しながら、なぜか彼が顔を輝かせた。
思わずげんなりとした視線を彼に向ける。
「…あなたこんな時に余裕ね」
「え、あ、うん…その…あまりに突然過ぎて、もう取り繕う暇もないかなって」
「ヘンなところで開き直らないでくれる…言っておくけどあたし、一切フォローできないわよ今の状態じゃ」
「う、うん…っ 母さんが看病してくれるなんて夢にも思わなかったから、油断してたけど…そうだよね、母さんが日向兄さんを、放っておくわけないんだ…月子ちゃんは何も言わず、ただ寝ててくれればいいよ」
そう笑った彼は、どことなく哀しそうで。
「…はやく、ふーふーしなさいよ」
なんとなくでそう言うと、また彼は嬉しそうに笑った。
今度は少しだけ哀しそうだった。