「はじめまして。日向の母です」
「は、はじめ、まして…っ、あの、お、お見舞いに…!」
しどろもどろになりながらも、ぺこりと頭を下げちらりとあたしの方を見る。
見たってムダだ。あたしは何も言えない。
「まぁ、わざわざありがとう。あぁ、そうだわ、せっかくのお客様なんだもの、いいものがあるの」
言ってお母さんは、持っていたお盆を近くのテーブルに置いて、はやくも部屋を出ていってしまった。
残ったあたし達は一瞬あっけにとられ、また沈黙。
なんだかマイペースなひとなんだな。
食事の時とは少し印象がちがう気がする。
ちらりとテーブルのお盆を覗き込むと、小さなひとり用の土鍋が見えた。
それから小皿に梅干と、薬も。
「助かった…頂いて、いいかしら…」
「え、あ、ていうか、食べれるかな…あの、ぼく、ウィダーインゼリーとか買ってきたけど…」
「今はあたしだから平気よ。あったかいものお腹に入れたい」
本能として必要性を感じたのか、なんとか体を動かす力を搾り出す。
のろのろと上半身だけ起こし息を吐いたところで、気を利かせた彼が土鍋の中身を取皿にとってくれた。
湯気のたちこめる、作りたてのお粥だった。