喉のあたりがすっぱくて苦い。
胃液が込み上げているのだ。
もう吐き出すものなんか、何もないだろうに。

はぁ、と短く息を吐いて、目だけを彼に向ける。

「あなた…もっと、自分を大事に、しなさいよ…」

意識が朦朧とする中、なぜかそう呟いていた。
浮かんだままに口から出たのだ。
理由も意味もなく。

「…っ、それはっ つ、月子ちゃんだって…!」

意外にも大きな声で反論が返ってきたのとほぼ同時に、なんの前触れもノックもなく、部屋のドアが開いた。

「……日向?」

そしてその向こうには。
彼の、鈴木陽太のお母さんが居た。