耳の奥で反芻する、お母さんの声。
曖昧だけど懐かしい。
頭をそっと撫でてくれる温もり。
不思議と本当に撫でられているような錯覚がした。
その温もりが、冷えた体にじんわりと広がる。
『…月子ひとりが、そんなにガンバらなくていいのよ…?』
いつだったっけ。そう言われたのは。
そう言いながらお母さんは、ずっとあたしの頭を撫でてくれていた。
熱に浮かされた記憶でも、覚えてる。
あの優しい温もりを、声を。
でも、ちがう。あたしだけじゃない。
あたしひとりじゃない。
あたしにそんなこと言ってもらう資格なんか、無い。
あたしは、ぜんぜん良いお姉ちゃんなんかじゃないんだよ。
そう言ったらお母さんはどうする?
こんなので泣くなんて…ずるいね。