でも、本物なわけない。
お母さんがここに居るわけないから。
きっと昔の記憶が、甦っているだけ。
あたしがお母さんに看病してもらったのは、もうずっと昔が最後だ。
まだ、瑠名が生まれる前。でもそう、お母さんのお腹の中には瑠名がいた。
あの時お母さんは、まだ今ほど家を空けることはなくて。
でも家に居たら居たで、満も望もまだ小さかったし、いつも動き回ってた気がする。
あたしや朔夜も手伝ってたけど、やっぱり限りはあって。
目まぐるしい毎日の中で、お母さんはいつも笑ってた。
それは今も、変わらない。
でも、昨日久しぶりに顔を見たけれど、とても疲れた顔をしていた。
それでも職業柄か憔悴しきった彼を看てくれて。
ごはんを軽く食べた後は、また朝がはやいので早々に寝てしまった。
まともに会話も、できずに。
朔夜のことも、相談できなかった。
だけど仕方ないことだ。
だってお母さんは、あたし達の為に働いてくれているんだもん。