『…えぇ…? いじめ、ですか…?』
ぼくが通っていた小学校の担任教師は、初老の女性教師で、生活指導の担任でもあった。
その日ぼくは母さんと日向兄さんにつれられて、来客用の部屋の机に座っていた。
机の上にはボロボロになった教科書や体操服が並んでいた。
『弟の容姿は、生まれつきだと何度も説明しましたよね? それなのに、それをクラスメイト達に受け容れてもらえていないようなんです。先生方も、フォローしてくださるんじゃなかったんですか?』
『…そうですね。生徒達にはきちんと説明してあります』
『ならどうしてこんなことになってるんですか! 弟は毎日傷を増やして帰ってくるんですよ…?!』
『傷って、そんな…少し過保護が過ぎるんじゃありませんか? お兄さん。男の子なんですから、友達と遊べば擦り傷くらいできますよ』
友達なんか、居ない。
でもそんなことここで言えるわけない。
母さんと日向兄さんの前で、そんなこと。
『陽太さんの外見は確かに最初は物珍しげに見る生徒もいましたが、興味があるからこそで、みんな陽太さんと仲良くなりたがっていますよ』
仲良くって、なんだろう。
確かにぼく以外のひとはみんな、笑っているけれど。
それが仲が良いって、ことなんだろうか。