なんとか立ち上がり、さっき教えてもらった席につく。

右手に痛覚が戻ってきたようで、上手く扱えない。
痛みでくらくらした。
痛みのせいだけじゃないことも解っていた。

教科書、出さなくちゃ。
反射的に机の中に手を突っ込んだけれど、そこには何も入ってなかった。
脇にかけてあるカバンが目について、手を伸ばす。
ずしりと、重たい。

月子ちゃんのカバン、こんなに重たかったっけ…?

でもそういえば各自の持ち物は、入れ替わった後でも自分で持ってたんだ。

そんなことを考えながら、壁に貼られた時間割を確認しながら教科書を探す。
ガラガラと扉を開けて教師が入ってきて、内心慌てた。

現国…教科書と、ノートと、辞書とか要るのかな…ひきこもりのぼくが、授業についていけるか心配だ。
脳みそは月子ちゃんのだから、なんとかならないだろうか。

月子ちゃんのカバンからとりあえず教科書とノートを取り出して机の上に置く。

でもそんな心配が杞憂だったことを、授業が始まってから知った。