ズキズキと痛むのは、蹴られた背中じゃなくて。
突き刺さるように疼いたのは、心臓だった。

見下ろす鋭い眼光の目。
赤く歪んだ唇。

彼女の長い脚が、ゆっくりと動く。
びくりと体が反応したけれど、上手く動かない体は間に合わなくて。

ぐしゃりと、彼女の足が月子ちゃんの手を踏み潰した。

「──ッ…!」

手の甲を思い切り踏み付けられ、追って湧く痛みに息が漏れた。
指先が痺れる。
じわじと痛みと熱が、右手に集中する。

堀越恭子が、視線を脇に避けていた女の子に向けた。
その視線に女の子が後ずさる。顔を青くしながら。

「えーっと、ダレだっけ? おんなじクラスだよねぇ?」
「あ、あの…」

「ダレだって訊いてんじゃん」
「ほ、星野です…っ」

「そ、星野サン。なに、コイツになんかされたの?」
「い、いいえ、別に…!」

怯えた星野さんが、ふるふると首を振る。
その様子を、満足げに眺めて。

「だよねぇ、話すとビョーキ、うつっちゃうから気をつけた方がいいよぉ?」