控えめに指差した先の席を確認し、ぼくは思わずほっと胸を撫で下ろす。
ひとまずは席につけそうで安心した。
それに何より、答えてくれたことが。
無視される覚悟もあったのに、応えてくれたことが嬉しかった。
それが何よりも、嬉しかった。
それから慌てて掴んでいたその手を離した。
「ご、ごめんね…っ あ、ありが…」
その言葉が言い終わらない内にぼくは背中に衝撃を受け、教室内に勢いよく倒れこんだ。
教室内が一瞬だけ、ざわつく。
いきなりのことで、一瞬何をされたかわからなかった。
ゆっくりと、頭だけ動かして振り返る。
見覚えのある上履きが視界に映り、そこでようやく背中を蹴られたのだと理解した。
「あれぇ、何か居た?」
――堀越恭子だ。