「…あ、ごめ…」
「あ、こちらこそ、すいませ…」
互いがほぼ無意識に謝り合う。
だけど相手の女の子がぼくの顔を見て、しまったという顔をしたのが容易に見て取れた。
それだけでぼくは理解できた。
このクラスでの、月子ちゃんの立ち位置を。
それは昔ぼくも体験したものだった。
疎まれる、やっかまれる、存在というのを。
…当たり前だ。
いじめっていうのはつまり、学校から、教室から、全員から。
見離されるってことなんだから。
でも、でもここは、あの日の教室ではないし、ぼくはぼくじゃない。
──だから。
「あの…!」
女の子はすぐにぼくから視線を逸らしたけれど、ぼくは咄嗟にその手をとっていた。