なんとか教室の入り口まで辿り着いたぼくは、しかしその扉の前で立ち往生していた。

教室までは、来れた。
頭上には「2年B組」のプレートが掲げられているから、間違いないだろう。

でも、席がわからない。
以前入れ替わった際に座っていた席は、全く覚えていない。
そんな余裕は流石に無かった。

どうしよう。
誰かに訊けば、教えてくれるだろうか。
迂闊に話しかけていいものだろうか。

むしろなんて訊けば怪しまれないかが一番の問題だけど。

そうだ、全員が席に着くのをここで待っていれば、残った席が月子ちゃんのだ。

あ、でもぼくの席は空いてるだろうし、桜塚達が授業にまともに出るようにも思えないから、却下だな。

そもそも、教室内での月子ちゃんの立ち位置というか、状況がわからない。
月子ちゃんをいじめてる子達も、そして桜塚達も、同じクラスだとは言っていた。
このクラス内の状況は、どうなってるんだろう。
考えただけでイヤな汗が滲む。

でも、今更だ。
ここまで、来たのだから。

そう、もう、ここまで来たのだから。

ぐ、と顔を上げたその時。
教室に入る女の子と、肩がぶつかってしまった。