月子ちゃんはきっと、何があったって、どんなことが起こったって、教室に行く。
授業をちゃんと受ける。

それをぼくは、知っている。
知っているんだ。

ごしごしと制服の袖で目元をこする。
涙はもうとっくに止まっていた。

解けていた髪を、いつもの月子ちゃんを思い出しながら両耳のところできつくゴムで結う。
少しだけ気持ちが、強くなった気がした。

もう一度強く、スカートの埃を払う。
パン、と思ったより大きな音が空に鳴った。

スカーフを一度解いて結びなおす。
さっきよりはちょっとだけ、マシに見えた。

それから、歩き出す。

月子ちゃんはきっと、逃げないから。

ぼくはきっとそれだけは、守らなくちゃいけないものだと思った。