どれくらいそこで、そうしていただろう。
校舎内に響くチャイムの音が、この場所まで届いた。
少し離れた遠くで、生徒達の喧騒が風に乗って聞こえてくる。
おそらく予鈴。
急いで戻らないと、午後の授業が始まってしまう。
だけど、教室になんか行けない。
行けるわけない。このぼくが。
たとえ月子ちゃんの体だとしても、ここはあんなにまで避けていた、学校。
桜塚達が居るかもしれない。
それに月子ちゃんをいじめてるヤツらだって。
今すぐにでも家に逃げ帰りたい。
もう二度とあの部屋から出たくない。
もう、二度と──
…結局ぼくに、何かを守れるわけないんだ。
こんなぼくにでもできることがあるなんて、そんなことあるわけなかったんだ。
…帰ろう。
そうだ、入れ替わってしまったぼくの体は、今とても大変な気がする。
悪化してないと良いけど…月子ちゃん、きっと苦しんでる。
また、ぼくの所為で。
ず、と鼻をすすりながら、ゆっくりと立ち上がる。
少しずつ体に力が戻ってきた。
深く息を吸って、体内に酸素を送る。
砂と埃を軽く払い、それからぎこちなく制服のスカーフを結んだ。
今度はなんとか結べたけれど、不恰好でバランスが悪くて、心底月子ちゃんに申し訳なく思った。