この涙の理由が、わからない。
どこから出たものかさえも。
どこから出てくるのかさえも。
だけど涙は止まらなかった。
「─……ぅ、…っく」
へなへなと全身の力が抜け立っていられず、思わずその番にへたりこむ。
震える手で、握った赤いスカーフをなんとか結ぼうとしたけれど、上手く結べなるわけもなくて。
するりと掴んだ小さな拳の隙間から、スカーフの赤が零れた。
抵抗、したのは。ほんの一握りの、使命感からだった。
この体を、守らなくちゃって。
月子ちゃんの体を、守らなくちゃって。
だけど結局ぼくには、何もできなかった。
得意の逃げることすら、かなわなかった。
無力だという結果だけが残る。
情けなくてやるせない。
そして、何より。
──くやしかった。