そこでようやく、なんのことだか理解した。
理解、できた。

昴流さんが何を言ってるのか。
何に怒っているのか。

彼の言うことは抽象的で、すぐにはわからなかったけれど。

“ぼく”だ。

昨日、月子ちゃんと一緒に居た。

“鈴木陽太”に、怒っているんだ。

「──スバル」

突如、声が沸いた。
その瞬間、ぼくは弾かれたように短く息を吐き出した。
呼吸さえ忘れていた。できなかった。
本当に死ぬかと思った。

ぼくは指一本動かせなかったけれど、目の前の昴流さんが顔だけ声の方に向ける。
なんとかぼくもちらりと目だけで相手を確認する。

昴流さんにひけをとらない位派手な見た目に、長髪の男の人がそこに居た