そこでいったん、ぼくの意識は切れた。

そして、今─

この現状が現実だとしたら、ぼくはまたけっきょく、逃げたんだ。
誰か、何かと。

たぶん手首は切ってない。
そこまでは体は動かなかった。
──でも…

「…どうしたの?」

耳元でかけられた声に、体がびくりと大きく撥ねた。
この、カンジは。
今、ぜったい、耳をかじられている。

ぬるりとした生温かい息が、直接耳にかかった。

慌てて飛んでいた意識を戻すと、今の状況にまたもやぎょっとした。
いつの間にか体勢が変わっている。

体がびっくりするくらい密着していた。
後ろから抱きかかえられる形で、ぴったりと。

体温が、息が、近い。
眩暈が、する。

ここまでの、自分の状況は思い出せた。
理解できた。

じゃあ、“これ”は?

月子ちゃんの、この状況は─…?