彼の涙がたとえ逃げでも弱さでも、何もしないあたしなんかより、ぜんぜんマシだと思った。
怯えでも弱さでも逃げでも。
何かを感じ、抱えて、涙する彼は。
あたしんなかよりよっぽど、“生きている”。
生きて、いくべきだ。
「────…ッ」
肌の下に、柔らかな毛布の感触を感じた。
あたしはうつ伏せに寝ていて、右手には何か持っている。
…あたし…?
ちがう、これは──
ガチャリと足元から、ドアの開く音。
少しだけ聞き慣れた声が耳に届いた。
「…陽太…?」
──また、入れ替わっていた。
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