「昨日も訊いたけどさぁ、月子チャン、先週の土曜日学校来てたでしょ?」
「…昨日も言いましたけど、補講を受けてました」
「だよねぇ、やっぱり人違いじゃないよねぇ…」
「…? 会いましたっけ…?」
やけに含んだ言い方をする。
用事があるならはやく済ませてほしい。
そしてさっさと解放してほしい。
相変わらず顔の距離は近いまま。
抵抗も拒絶もこのひとには全部ムダ。
解っているからされるがまま、彼の気分に任せるしかない。
ふと無意識に唇の血を拭った指先が、彼に奪われた。
彼はあたしの指を自分の口元に持っていき、またひと舐め。
目が、合う。
ぞわりとした。
このひとが実は吸血鬼とかいうアホなオチでもない限り、きっと変態だ。
アブナイ輩以外の何者でもない。
きっとあたしが嫌がるのを承知でやっている。
彼はあたしの指に吐息を吐きながら、続けた。